患者満足度向上のための取り組み7選│クリニックの改善点を解説
「最近、患者数が減った」「口コミ評価が気になる」など、患者の反応はクリニック経営を左右する悩みです。特に、患者満足度は患者からの反応が明確にわかる指標の一つです。
患者満足度を向上させることで集患や増患につなげたいと考えつつも、何をすればよいかわからない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、クリニックで実践できる患者満足度向上の取り組みを7つ紹介します。接遇や環境、DX化などアプローチ別に解説しますので、自院で取り組めそうな施策を見つけてみましょう。
目次
患者満足度とは?
患者満足度とは、患者が医療サービスにどの程度満足したかを示す指標です。ビジネスにおける顧客満足度(CS)と同じ考え方で、患者が期待するサービスと実際の接遇の差で決まります。
患者満足度向上の取り組みを紹介する前に、基本的な情報として以下の点を説明します。
- 患者満足度につながる要因
- 患者が不満を抱くポイント
- 患者満足度向上によるクリニックへの効果
患者満足度につながる要因
患者満足度につながる要因としては、主に以下のようなポイントが挙げられます。
大項目 | 小項目 | 具体例 |
---|---|---|
1. スタッフの対応 | 医師の診察と説明 | ・丁寧でわかりやすい説明と親身な対応 ・信頼感を与える温かい態度と確かな診療技術 |
看護師、受付スタッフの接遇 | ・励ましやいたわりのある温かい言葉遣い ・丁寧な事務説明(会計、予約など) |
|
2. 利便性 | 待ち時間の快適さ | ・予約システムや順番待ち表示によるストレス軽減 ・雑誌や無料Wi-Fiの提供など、快適な待合室づくり |
アクセスのしやすさ | ・土曜・夜間診療など、柔軟な診療時間の設定 ・十分な駐車スペースの確保や送迎サービス |
|
3. 設備と環境 | 院内の快適性 | ・清掃の行き届いた清潔な空間 ・安らぎを与える内装 |
プライバシー | ・診察室の個室化 ・パーテーション設置 |
|
4. 医療体制 | 情報公開 | ・ウェブサイト等での治療実績の公開 ・患者アンケートの公表や意見の反映 |
患者の意思尊重 | ・セカンドオピニオンへの積極的な対応 ・地域の医療機関との連携 |
特に、外来診療では医師への満足度が最も患者満足度に影響し、続いて看護師への満足度が重要とされています。院内の清潔さや快適性などの環境面も影響しますが、医師や看護師の評価に比べると患者満足度との関連が弱いことがわかっています。
患者と1対1で接する機会の多い医師と看護師の応対が、患者満足度を左右するといえるでしょう。
参考:患者満足度を規定する要因の検討 ―医療従事者の職種間協力に着目して―│実験社会心理学研究
患者が不満を抱くポイント
厚生労働省の令和5年度受療行動調査によると、外来患者の不満で最も多いのは待ち時間です。その他にも、以下のように診察時間や医師との対話に不満を感じる傾向があります。
- 診察までの待ち時間:25.2%
- 診察時間:7.0%
- 医師との対話:6.1%
診察まで待たされるうえに診察時間が短く、医師と十分に対話できないといった体験が、患者の不満につながりやすいといえます。
患者満足度向上によるクリニックへの効果
患者満足度の向上は、クリニック経営において次のような効果をもたらします。
- 信頼獲得による経営の安定化:よい評判や口コミが広がって集患につながる。
- 医療の質と安全の向上:医師と患者間の対話が促進されて正確な診断やインシデントリスクの低減につながる。
- 人材確保と定着:患者からの感謝の声が増えてスタッフのやりがいが高まる。
患者満足度向上による集患効果だけでなく、提供する医療の質やスタッフのやりがいが高まる効果があります。
①【接遇】信頼関係を構築する患者満足度向上の取り組み
患者との信頼関係は、満足度の根幹となる不可欠な要素です。日々のコミュニケーションや患者の声に耳を傾ける仕組みづくりなど、接遇面での取り組みを解説します。
- 医師の説明力強化とスタッフへの研修
- 患者の声を真摯に受け止める仕組みづくり
医師の説明力強化とスタッフへの研修
患者との信頼関係を築くには、丁寧でわかりやすいコミュニケーションが不可欠です。医師は専門用語を避け、患者が納得できるまで治療方針を説明する必要があります。図や資料を用いる工夫も、患者の理解を助ける上で有効でしょう。
また、受付スタッフを含む全職員の接遇スキル向上も重要です。定期的な研修を実施し、患者に寄り添う姿勢をクリニック全体で共有することが求められます。
医師の対応強化には、AI音声クラークの活用も効果的です。診察の会話を録音してカルテに要約されるため、診察で患者に寄り添いやすくなります。
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患者の声を真摯に受け止める仕組みづくり
患者の意見に耳を傾け、改善に活かす仕組みづくりも大切です。院内に意見箱やアンケート用紙を設置する方法は、多くの医療機関で導入されています。匿名で意見を投書できるため、患者の本音を引き出しやすいメリットがあるでしょう。
重要なのは、集めた声を放置しないことです。寄せられた意見は定期的に集計・分析し、院内会議などで共有します。改善策を実行した後は結果を院内掲示などで報告すると、患者との信頼関係がより深まるでしょう。
「私たちの声を聞いてくれる」という姿勢が、患者からの評価を高めます。
②【環境】院内体験を改善する患者満足度向上の取り組み
患者が院内で過ごす時間の快適性も、患者満足度に影響します。患者が不満を抱きやすい待ち時間の問題も、落ち着いた院内環境なら軽減されます。
全ての患者が心地よく過ごせる空間づくりのための取り組みを解説します。
- 清潔でリラックスできる空間づくり
- あらゆる患者に配慮したユニバーサルデザイン
清潔でリラックスできる空間づくり
院内を清潔に保つことは医療機関としての基本であり、患者の安心感につながります。待合室や診察室、トイレなどの定期的な清掃と消毒を徹底しましょう。
また、待ち時間は患者にとってストレスになりやすい要因です。患者の意見を取り入れながら、緊張や不安を緩和できるような待合室を整えましょう。具体的には、以下のような例が挙げられます。
- リラックスできるBGMを流す
- 内装に観葉植物を取り入れる
- カフェスペースを設ける(フリーWiFi・充電用コンセント設備)
- デジタルサイネージを活用する
- 座りやすい椅子やソファーを導入する
あらゆる患者に配慮したユニバーサルデザイン
高齢者や車椅子の患者が安心して来院できるよう、院内のバリアフリー化は欠かせません。段差の解消や手すりの設置、車椅子対応トイレの整備などを進めましょう。必要に応じて、車椅子の貸し出しサービスを行うことも有効です。
また、近年増加している外国人患者への対応も大切となります。多言語対応の問診票を用意したりタブレット型の通訳サービスを導入したりすることで、言語の壁を低減できます。
③【DX】待ち時間解消を目指す患者満足度向上の取り組み
DXツールの活用は、患者の利便性向上や業務効率化には欠かせません。予約から会計までのプロセスをスムーズにし、患者満足度を向上させる取り組みを紹介します。
- Web問診:受付と診察をスムーズに
- 予約システム:待ち時間を可視化
- 自動精算機:会計待ちを短縮
Web問診:受付と診察をスムーズに
Web問診システムは、患者が来院前にスマートフォンなどで問診を済ませられるツールです。来院後の問診票記入の手間が省けるため、受付での待ち時間短縮につながります。
特に、初診時の待ち時間は不満につながりやすいことがわかっています。初診時の問診を事前に行っておくことで得られる患者満足度向上効果は大きいでしょう。
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予約システム:待ち時間を可視化
予約システムの導入により24時間いつでも予約が可能になるため、診療時間内に電話をかける手間が省けます。
また、システムによっては診察の順番が近づくと患者に通知が届く機能もあります。待ち時間を院外で過ごすなど有効活用でき、待たされるストレスが大幅に軽減されます。
予約システムは、待ち時間を解消する上で効果的な手段です。
自動精算機:会計待ちを短縮
診察後の会計待ちも患者のストレスの一つです。自動精算機やキャッシュレス決済を導入することで、会計待ち時間を短縮できます。
現金のやり取りが不要になるため、人的なミスを防ぎ、スタッフの業務負担を軽減する効果もあります。さらに、非接触での決済は感染症対策の観点からも患者に安心感を与えるでしょう。患者とスタッフ双方にとってメリットの大きい取り組みといえます。
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患者満足度向上を成功させるための3つのステップ
患者満足度向上の取り組みは、やみくもに進めても効果は限定的です。自院の課題を正確に把握し、継続的に改善するための3つのステップを解説します。
- 患者満足度調査から課題の優先順位をつける
- 明確な目標(KPI)の設定と効果検証
- スタッフの負担にならない範囲で継続的に取り組む
1. 患者満足度調査から課題の優先順位をつける
まずはアンケートや満足度調査を実施し、患者のニーズを把握します。自院の調査で特に評価の低い項目を特定し、改善の優先順位をつけましょう。
患者満足度調査の項目は漠然としたものではなく、評価対象を具体的に特定した質問設計が大切です。例えば、以下のような質問項目が考えられます。
項目 | 説明 | 具体例 |
---|---|---|
スタッフの対応 | 医師や看護師、受付など患者が接する各スタッフの対応を評価。 | ・説明のわかりやすさ ・相談のしやすさ ・丁寧な言葉遣いや態度 ・診断や治療内容の満足度 |
待ち時間 | 患者の不満が最も出やすい項目であり重要。 | ・診察待ち時間 ・会計待ち時間 ・処方箋発行までの時間 |
病院設備・環境 | 院内での快適性や安全性を評価。 | ・院内の清潔さや明るさ ・バリアフリー対応 |
病院全体の評価 | 治療内容を含めた、病院に対する総合的な印象を評価。 | ・病院全体への総合満足度 ・家族や友人に勧めたいか |
課題を特定して最適な対策をクリニック一丸となって取り組むことが大切です。
2. 明確な目標(KPI)の設定と効果検証
課題の優先順位が決まったら、具体的で測定可能な目標(KPI)を設定します。
例えば、「平均待ち時間を15分短縮する」「満足度調査の『大変満足』の割合を1年で10%向上させる」など、数値で目標を立てることが重要です。具体的には以下のようなKPIから課題にあったものを設定しましょう。
- 患者満足度調査の結果
- 診察待ち時間
- キャンセル率
- 初診後の再診率
設定した目標は対策や改善後に再度調査を行い、効果を測定することが大切です。院内で共有して改善策を考えるとともに、患者にも結果を周知しましょう。「患者の意見を積極的に取り入れてくれる」とクリニックへの信頼が高まります。
3. スタッフの負担にならない範囲で継続的に取り組む
患者満足度向上への取り組みがスタッフの負担増につながらないように注意が必要です。新しい取り組みがスタッフの負担を増やしていないか、業務プロセスも含めて改善を検討していきましょう。
患者満足度向上とスタッフの満足度の好循環を
患者満足度向上のためには、調査やアンケートから課題を特定した上で適切な取り組みを行うことが重要です。そして、患者満足度向上のために最も大切なのが医師や看護師などスタッフの接遇です。
患者から信頼される対応のためには、業務効率化によりスタッフの心理的な余裕を生み出すことが欠かせません。
さまざまな施策の中でも、特にWeb問診の導入は「待ち時間の短縮」と「診察の効率化」ができるため、費用対効果の高い方法といえます。
株式会社ヒーローイノベーションでは、現場の医師が自らの経験をもとに開発した「メルプWEB問診」をご提供しています。業務効率化と患者満足度の両立にお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
著者PROFILE

- 医療機器メーカー営業としてキャリアをスタートした後、医療ITベンチャーにて生活習慣病向けPHRサービスのプロダクトマーケティング責任者をはじめ、メルプWEB問診の事業責任者を経験。その後、クリニック専用の自動精算機・自動釣銭機の商品の企画・開発を手がけ、現在は「医療を便利にわかりやすく」をミッションにスマートクリニックの社会実装に向け同事業の企画・推進を担当。
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