病院・クリニックの待ち時間が長い原因は?クレーム対応と防止策を解説
- 2025年11月28日
- Web予約,Web問診,自動釣銭機・セミセルフレジ,自動精算機

「患者から『予約したのに1時間も待たされた』と怒られてしまった」「受付スタッフがクレーム対応に疲弊している」
日々の診療の中で、このような待ち時間に関するトラブルに頭を悩ませていませんか。丁寧な診療を心がけるほど待ち時間が延びてしまうのは、多くのクリニックで抱えるジレンマです。
しかし、待ち時間対策に取り組むことは、単にクレームを減らすだけではなく、患者満足度を高める施策となります。
本記事では、病院・クリニックにおける待ち時間が生じる原因やクレームが起きた時の対応方法、待ち時間を減らす対策を解説します。
待ち時間を軽減することで、患者満足度を高め、スタッフも守るための体制づくりの参考にしてください。
目次
病院・クリニックの待ち時間が長い原因

病院・クリニックの待ち時間が長い原因は、おもに以下の3つです。
- 丁寧な対応を目指すゆえのジレンマ
- 急患や検査対応による予定外の遅れ
- 問診や会計など業務の非効率さ
1.丁寧な対応を目指すゆえのジレンマ
一人ひとりの患者に寄り添った丁寧な診療を行おうとする姿勢が、結果として全体の待ち時間を延ばしているケースがあります。
患者の話をじっくり聞き、詳細な説明を行うことは医療の質を高める上で欠かせません。特に高齢の患者が多いクリニックでは、診療以外のコミュニケーションに時間がかかることもあります。
「よい医療を提供したい」という医師の想いと、「早く帰りたい」という患者ニーズのバランスを取ることは、クリニックにおける課題の一つです。
2.急患や検査対応による予定外の遅れ
予約枠通りに診療が進まない原因として、急患対応や検査結果待ちなどの予測できない事態が挙げられます。
具合の悪い患者を優先したり緊急の処置が必要になったりする場合、順番が前後することは避けられません。また、採血などの検査結果が出るまでに時間がかかり、待合室で待つ患者が増えることもあります。
問題なのは、遅れが生じた際に、待っている患者に対して十分なアナウンスがなされていないことです。
事情がわからないまま待たされることは、患者にとってストレスとなり、不信感を募らせる原因となります。
3.問診や会計など業務の非効率さ
診療そのものだけでなく、受付から会計までの事務プロセスが非効率なことも、滞在時間が増える原因です。
例えば、紙の問診票を使用している場合、患者が記入する時間やスタッフが電子カルテに転記する作業が発生します。また、診療報酬計算や会計処理に時間がかかり、会計待ちが生じるケースもあります。
事務作業の効率化は、待ち時間短縮につながる重要な要素です。
病院・クリニックの待ち時間が長いと生じる3つの悪影響とは?
厚生労働省の「令和5年受療行動調査」によると、以下のように診察までの待ち時間に関する不満は、他の項目に比べて多いことがわかっています。

参考:令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況│厚生労働省を編集して作成
待ち時間が長いと生じる病院・クリニックでの悪影響は以下の3つです。
- 口コミの評価が下がり集患に影響する
- 混雑した院内を見て患者が受診を控えてしまう
- 受付スタッフの疲弊により離職リスクが高まる
1.口コミの評価が下がり集患に影響する
待ち時間に対する不満は、病院やクリニックへの悪い評価につながり、集患に影響します。
厚生労働省の令和5年受療行動調査によると、外来受診の参考にする情報は「家族・友人・知人の口コミ」が68.4%と最も多くなっています。また、「医療機関の看板やパンフレットなどの広告」を参考にする患者は28.8%でした。広告よりも口コミが重要だといえるでしょう。
「2時間も待たされた」「あとどれくらいか聞いても教えてくれなかった」などの悪い口コミが定着すると、広告費をかけても新患が増えないという悪循環に陥る可能性があります。
参考:令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況│厚生労働省
2.混雑した院内を見て患者が受診を控えてしまう
待合室が混雑していると、患者が受診そのものを諦めてしまう可能性があります。
待合室に入りきれないほどの患者がいると、患者は「他の空いている病院に行こう」と判断します。
特に、体調が悪い患者にとって、長時間待つこと自体が身体的な負担となるため、混雑した状況は受診のハードルになりがちです。また、待合室の混雑は院内感染の不安を招きます。感染症流行期には、長時間滞在が受診ハードルとなり、患者離れを加速させるおそれがあります。
混雑は人気の証でもありますが、過度な混雑は本来診るべき患者を逃す原因となります。
3.受付スタッフの疲弊により離職リスクが高まる
待ち時間のしわ寄せは、受付や看護師などの現場スタッフに向かい、離職のリスクを高めます。
待ち時間が長くなると、受付には「あとどれくらい?」「まだ呼ばれないのか」といった問い合わせやクレームが生じます。スタッフは本来の業務に加え、患者の怒りを受け止める精神的な負担を強いられます。
常にピリピリとした環境で働き続けることは、スタッフのメンタルヘルス悪化やモチベーション低下を招きます。最終的には離職のリスクが高まってしまうでしょう。
患者が「待ち時間が長い」と感じる時間の限界は?

一般的に、30~40分程度が「待ち時間が長い」と感じるかどうかのわかれ目といえるでしょう。
病院を対象にした待ち時間と患者満足度の調査では、患者が許容できる平均時間は以下のとおりでした。
- 受付:18分
- 診察待ち:37分
- 検査:23分
- 計算・会計:10分
- 病院滞在時間:68分
診察までの待ち時間として許容できる平均は37分であり、この時間を超えると患者は不満を抱きやすくなるでしょう。
また、比較的時間がかかると想定される「初診」であっても、再診や予約診療と比べて待ち時間の許容範囲に大きな差はみられませんでした。「初診だから待つのが当たり前」というわけではなく、再診患者と同様にスムーズな診療体制が求められています。
参考:待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査│日本医療マネジメント学会雑誌
「待ち時間が長い!」とクレームが発生した時の対応方法3選

どんなに対策をしても、待ち時間がゼロになることはありません。ここでは、クレーム発生時の対策を3つ紹介します。
- 「傾聴」で怒りを受け止め、待ち時間の目安を伝える
- 内容によっては院長を含めて対応する
- クレーム内容を院内で共有する
1.「傾聴」で怒りを受け止め、待ち時間の目安を伝える
クレーム対応の初動では、まず患者の言い分を否定せずに最後まで聞く「傾聴」の姿勢を示し、心情に寄り添うことが大切です。
「お待たせして申し訳ございません」と謝罪し、相手の怒りを受け止めます。
「確認しますのでお待ちください」と突き放したり、「他の方も待っています」と言い訳をしたりすることはNGです。また、「あとどれくらいか」と聞かれた際に「わかりません」と答えるのは不安を増幅させます。
診察状況を確認した上で、「あと3人目ですので、およそ15分ほどかと思います」と具体的な見通しを伝えることで、患者のイライラを軽減できます。
2.内容によっては院長を含めて対応する
受付スタッフだけで対応が難しい場合や、患者の怒りが収まらない場合は、院長や事務長などの責任者が対応しましょう。
院長であれば、診察の順番を調整したり医学的な観点から説明したりと、スタッフでは判断できない解決策を提案できます。
待合室で騒ぐと他の患者への迷惑にもなるため、別室へ案内して落ち着いて話をすることも、状況を鎮静化させるためのテクニックの一つです。
3.クレーム内容を院内で共有する
発生したクレームは、必ずスタッフ間で共有しクリニック全体の問題として扱います。以下の3つの観点で、クレーム内容を共有しましょう。
- どのような状況で起こったのか
- 何に対して患者が怒ったか
- どう対応して解決したのか
定期的にミーティングや院内勉強会を開き、ケーススタディとして共有することで、スタッフの対応スキル向上につながります。また、対応をマニュアル化しておけば、誰が対応しても一貫したサービスを提供できるようになります。
悪質なクレーム(ペイシェントハラスメント)には毅然とした対応を
待ち時間への不満から、度を超えたクレームに発展するケースもあります。正当な苦情の範囲を超えた理不尽な要求に対しては、毅然とした態度で対応しましょう。
とくに、以下のような行為は「ペイシェントハラスメント」に該当する可能性があります。
- 大声で怒鳴り続ける
- 長時間居座る
- スタッフの人格を否定する暴言を吐く
悪質なクレームがみられた際には、「他の患者様の迷惑になりますので」と警告し、なおも収まらない場合は警察へ通報することをマニュアルとして決めておきましょう。
また、病院・クリニックで勤務する医師には、医師法によって「応召義務」が課せられており、正当な事由がない限り診療拒否ができません。ただし、診療に必要な信頼関係を築けない場合には、診療を拒否する正当な事由になるという判例もあります。
病院・クリニックでのクレーム対応の詳しい説明は、関連記事もご覧ください。
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【医療機関向け】クレーム対応のポイント|患者別対策とAI音声入力の活用
参考:応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について│厚生労働省
長い待ち時間を短縮・軽減するクレーム予防策

クレーム防止には、患者の「体感待ち時間」を短くする工夫も必要です。待ち時間短縮につながるクレーム予防策を3つ紹介します。
- 待ち時間の快適さを向上させる
- 予約システムの導入で混雑を平準化する
- WEB問診と自動精算機で待ち時間を短縮する
1.待ち時間の快適さを向上させる
待合室の環境を整備し、患者がリラックスして過ごせるようにすることで、心理的な待ち時間(体感時間)を軽減します。
フリーWi-Fiやウォーターサーバーを設置することで、待ち時間を「自由に過ごせる時間」に変えられます。
座席の配置を工夫し、患者同士の視線が合わないように配慮することもストレス軽減に有効です。
2.予約システムの導入で混雑を平準化する
予約システムを導入し、患者の来院時間をコントロールすることで、待ち時間を減らします。
時間帯予約システムであれば「9:00~9:30の枠に〇名」といった形で来院人数を制限できるため、朝一番などの特定の時間に患者が殺到するのを防げます。
また、患者は自宅や外出先から予約でき、自分の順番や予約時間が近づくまで院外で過ごすことが可能です。
予約枠を管理し、患者の来院を分散させることで、待合室の混雑を解消できるでしょう。
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3.WEB問診と自動精算機で待ち時間を短縮する
診察前後の事務作業をITツールで効率化し、スタッフが患者対応や診療補助に集中できる環境を作ります。
例えば、Web問診を導入すれば、患者は自宅で事前に問診を入力でき、院内での記入時間がなくなります。医師も事前に症状を把握できるため、診察がスムーズに進むでしょう。
また、自動精算機を導入すれば診察後の会計待ち時間を大幅に短縮できます。
事務作業をシステムに任せることで、人の手が必要なケアに時間を割けるようになり、結果として全体の回転率が向上します。
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病院・クリニックにおける待ち時間対策は、患者満足度を上げるためだけでなく、スタッフを疲弊から守り、医院の経営を安定させるために不可欠な取り組みです。
精神論やスタッフの頑張りだけで待ち時間を短縮するには限界があります。予約システムによる混雑の平準化やWeb問診と自動精算機による業務効率化、待合室の環境改善など、「仕組み」を変えることが欠かせません。
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