クリニックの人手不足はなぜ起きる?対策とスタッフ定着のポイント
- 2025年6月16日
- 人材
「またスタッフが辞めてしまった」「残業続きでスタッフも疲れている…」など、クリニックが直面する人手不足の悩みはつきません。
人手不足の解消には、原因を正しく理解し、スタッフ定着のための対策が重要です。
本記事では、クリニックの人手不足が起こる原因を統計データにもとづく現状とともに解説します。そして、人手不足解消の方法や定着のための仕組みづくりも紹介します。限られた予算と時間の中で実践できる方法として、参考にしてみてください。
クリニックの人手不足の原因と現状
クリニックを含む医療現場全体での人手不足は、社会問題となっています。クリニックの人手不足は共通の問題であり、スタッフが辞めてしまう・定着しない原因を理解し、対策を立てることが大切です。
データからわかる人手不足の現状や、よくある離職理由を解説します。
統計データからわかる人手不足の現状
引用:労働市場の未来推計2035│パーソル総合研究所
上記の図のように、パーソル総合研究所の調査では、医療・福祉業界で2030年までに約49万人相当の人材が不足すると予測されています。現在生じている人手不足の問題は今後も続く見込みであり、何らかの対策が必要です。
医療スタッフ別でも、看護師や医療事務の需要に対して供給が追いついていない現状があります。
看護師は、資格保有者は増加しているものの、現場で働いていない「潜在看護師」が65才未満で約70万人もいると推計されています。医療事務に関しても、2022年度の有効求人倍率は全国平均で2倍です。
単に求人を出すだけでは、人材確保が難しい状況にあるといえるでしょう。
参考:新たな看護職員の働き方等に対応した看護職員需給推計への影響要因と エビデンスの検証についての研究│厚生労働省
参考:医療事務│職業情報提供サイト(日本版O-NET)
スタッフが辞めてしまう・定着しない原因
辞めてしまう原因 | 具体的な内容 |
ライフイベント |
|
労働環境 |
|
人間関係 |
|
給与・待遇・評価 |
|
ミスマッチ |
|
クリニックのスタッフが辞めてしまう原因は、主に上記の5つにわけられます。
女性スタッフが多いクリニックでは、結婚や出産などのライフイベントによる離職が多く発生します。また、業務量の多さや休みにくさ、さらに機器が古く業務効率が悪いなどの労働環境も離職理由の一つです。
さらに、「合わない人と常に働く必要がある」といった少人数特有の人間関係や、待遇への不満も影響します。就職前に得られる情報が少ないことから、採用後のミスマッチによる離職も生じがちです。
スタッフが辞めてしまう背景に、思い当たる理由がないかを意識し、対策を講じる必要があります。
人手不足が招くリスク
人手不足が続くと、スタッフの業務負担が増え、疲労やストレスがたまるでしょう。判断力や集中力が低下してミスが生じたり、意欲がなくなって患者への接遇がおろそかになったりする恐れがあります。
その結果、患者の待ち時間増加やクレームの発生が生じ、さらに業務負担が増大するといった悪循環に陥ります。さらに人手不足が加速すると、診療時間を短縮したり、開院日を減らしたりするなどの対応が必要となり、収益も圧迫しかねません。
「一時的な人手不足だから仕方ない」と片付けず、人手不足解消の対策を講じることが大切です。
クリニックの人手不足解消の対策
クリニックが直面している人手不足に対する対策としては以下の3つがあります。
- 人材確保
- アウトソーシング
- 業務効率化ツールの導入
1.人材確保
不足しているスタッフを採用することで人材を確保しましょう。ただ、単にスタッフの数を増やすだけでなく、クリニックの理念や雰囲気に合ったスタッフを見つけ、ミスマッチを防ぐことが重要です。
そのためには、まずは医療専門の求人サイトや地域のハローワークなどで募集をかけてみましょう。
採用時には、クリニックの規模や診療科、大切にしている理念などを考慮し、求めるスタッフ像を明確にしておくことが大切です。例えば、地域に根ざしたクリニックなら患者とのやりとりを大事にする人柄を、専門性を求めるなら経験の豊富さなど、基準を明確にします。
基準を決めておくことで、短期間での離職を防ぎ、定着率向上につながります。
2.アウトソーシング
スタッフの派遣や業務のアウトソーシングで既存スタッフの負担を軽減できます。アウトソーシングや派遣の活用が可能なのは、以下の業務や職種があります。
- 医療事務:レセプト作成、会計業務の一部、データ入力
- 看護師:スタッフの産休・育休や病気など一時的な人員不足時の看護師派遣
- その他:夜間や休日の電話対応(オンコール)、院内清掃、HPの更新作業
人手不足でも、代替の人員としてスムーズに活用可能です。スタッフは本来の業務に集中できるため、心身の負担を軽くできるでしょう。
3.業務効率化ツールの導入
診療オペレーションを効率化するツールを導入することで、スタッフの業務負担を減らします。例えば、患者が来院前に問診票をオンラインで記入できるWeb問診を導入すれば、待ち時間短縮やカルテ入力の手間を省けます。その他にも、予約や会計、レセプトなどを効率化するツールが効果的です。
【業務効率化ツールの一例】
- 予約システム:オンラインで予約取得が可能なシステムで、電話対応の削減につながる
- 自動精算機:患者自身が機械で会計ができるため、窓口対応が減らせる
- 電子カルテAI音声入力:診察中の会話を録音して要約、カルテに貼り付けが可能
電子カルテAI音声入力は診察中の会話をAIが自動で文字起こしし、SOAP形式に要約できるシステムです。録音した会話はクラウド上に保存され、スタッフ間で簡単に共有できます。患者から診察に関する問合せがあっても、医師に確認することなく対応できるため、スタッフの負担軽減につながります。
株式会社ヒーローイノベーションでは、電子カルテ音声入力システム「MEDISMA AIクラーク」をご提供しています。ご相談は無料で行っておりますので、興味のある方はお問い合わせください。
スタッフが辞めないクリニックのための職場づくりとは
人手不足の解消には、スタッフが長く働ける職場づくりも大切です。日々の意識と仕組みづくりで実践できる職場づくりのポイントを紹介します。
- スタッフの本音に耳を傾ける
- 成長と貢献を実感できる制度をつくる
- ポジティブチェックの文化を意識する
1.スタッフの本音に耳を傾ける
スタッフの本音に耳を傾け、何を求めているのかを把握することで、信頼関係を構築します。従業員の本音を引き出すためには、スタッフの満足度調査を行うことが有効です。
代表的な方法であるeNPSなら、「親しい知人や友人にあなたの職場をどれくらい勧めたいか」という1問でスタッフの満足度を測れます。満足度が低い状態であれば、その理由を追加項目で尋ね、要因の分析を行います。
また、個別面談の設定など、相談しやすい環境づくりも必要です。院長や管理者が率先して話を聞く姿勢を示したり、匿名で相談できる窓口を設けたりするど、安心して本音を伝えられる仕組みを整えます。
2.成長と貢献を実感できる制度をつくる
スタッフが仕事にやりがいを感じ、積極的にクリニックに貢献したいと思える環境が定着率アップにつながります。
スタッフが「この職場で成長できる」と実感できるようフィードバックを重視しましょう。日々の頑張りや成果を評価したり、スタッフの仕事がクリニックにどう貢献しているかを振り返る機会を設けます。
月1回程度ミーティングを開き、スタッフへフィードバックを行うことで、モチベーションの向上につながります。
3.ポジティブチェックの文化を意識する
ポジティブチェックとは、スタッフの良い点や努力を認め、前向きな行動を促すものです。医療現場はミスが患者の命に直結する可能性があるため、悪いところに目が向く「ネガティブチェック」の文化になりがちです。
患者への対応ではネガティブチェックが必要ですが、スタッフに対してはポジティブな側面をキャッチすることが重要です。
患者からの感謝を共有する取り組みやスタッフ間で感謝を伝え合う「サンクスカード」など、長所に目を向ける仕組みを整えましょう。
人手不足解消の鍵は「スタッフが定着する職場づくり」
クリニックの人手不足は、医療サービスの低下やスタッフの疲弊を招く問題の一つです。人手不足の解消はもちろん、重要なのはスタッフが定着する「辞めない職場づくり」です。スタッフの本音に耳を傾けて、成長と貢献が実感できる仕組みづくりをすすめましょう。
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