電子カルテ入力は難しくない!練習ツールや代行入力、音声入力AIを紹介
- 2025年6月16日
- 電子カルテ
電子カルテの入力作業は、医療現場では負担の大きい業務の一つです。「カルテを効率よく入力したい」「パソコン操作が苦手でも使いこなしたい」と悩む医師や医療スタッフも多いのではないでしょうか。
本記事では、電子カルテの入力をスムーズにする方法を紹介します。すぐに実践できる電子カルテの機能や練習方法の説明から、負担を軽減する代行入力の方法までを解説します。
すぐに実践できる!電子カルテ入力を効率化する方法
カルテの入力時間を短縮するため、日々の診療を効率化する方法は以下の3つです。
- 定型文やテンプレート
- 過去カルテのコピー
- ユーザー辞書の最適化
1.定型文やテンプレートを活用する
頻繁に使用する診療内容やオーダーをセット登録することで、ワンクリックで必要な情報を呼び出せるようになります。病名や処方、検査項目を組み合わせたオーダーセットを事前に作成しておくことで、入力時間を削減できます。特に、以下のような定期的に用いるケースで有効です。
- 初診時の予診
- 特定の症状に対する定型的な処置
- 季節性の疾患(インフルエンザ、花粉症など)
具体的には、次のようなテンプレートを活用することで効率化できます。
内科(胸の痛み)
【病歴テンプレート:胸痛】
■ 性状:圧迫感・灼熱感・鋭痛 ・刺すような痛み
■ 部位:胸骨後部・左胸部・右胸部・背部への放散
■ 誘因:労作時・安静時・食後 ・体位変換時
■ 持続時間:数分・10分以上・30分以上・数時間
■ 随伴症状:呼吸困難・冷や汗・吐き気・動悸
内科(糖尿病の定期受診)
【生活習慣病管理テンプレート:糖尿病】
■ 検査値
HbA1c: ___% (前回: ___%, 前々回: ___%)
空腹時血糖: ___mg/dl(前回: ___mg/dl)
体重: ___kg (前回比: ±___kg)
■ 服薬状況:良好 ・時々忘れる・自己調整あり
■ 自己血糖測定:実施(___回/日) ・未実施
■ 低血糖エピソード:なし・あり(___回/週)
■ 生活指導:食事・運動・フットケア・禁煙
2.過去カルテのコピー
電子カルテは、過去カルテから一括コピーが可能です。慢性疾患の定期受診など、同じような内容を繰り返し入力する手間が省けます。また、過去のオーダーもコピーできるため、処方薬が多い高齢患者の対応も漏れなくスムーズに行えます。
コピーするための過去カルテを検索する場合は、以下のように行うと効率的でしょう。
- 症状、検査結果、処方薬などの具体的なキーワードで検索
- 日付範囲を指定して検索する(「直近3ヶ月の血圧データ」など)
- 検査結果の数値変化を時系列で確認する
3.ユーザー辞書の最適化
パソコンに搭載されているユーザ辞書機能を最適化することで、入力がスムーズになります。専門用語や医療用語、略語など、カルテによく使用する単語をユーザー辞書に登録します。
例えば、「心筋梗塞=しんきん」と登録しておき、「しんきん」と入力するだけで即時変換が可能です。具体的には、以下のような用語を登録しておくとよいでしょう。
- 診療科特有の専門用語・略語
- 薬の投与回数(1日2回朝夕食後・1日3回毎食後などわけて登録)
- 紹介先の医療機関や所属する医師名
- メールや紹介状作成時の定型文(『平素よりお世話になっております』など)
タイピング速度が向上する電子カルテの入力練習方法
電子カルテを効率よく入力するには、タイピングスキルの向上が欠かせません。パソコン操作が苦手な医師やスタッフでも、練習を重ねることで入力速度を向上できます。基礎的なタイピング練習と医療専門用語の入力練習の2つの面から説明します。
1.基礎的なタイピング練習:e-typing・寿司打など
タイピングの基礎的なスキルを高めるためには、正しい指の位置の習得とブラインドタッチの練習が必要です。練習には、Web上にある練習ツールを活用しましょう。効果的なタイピング練習ツールとして、以下のようなものがおすすめです。
特に、e-typingやmyTypingでは単語や文章を入力する課題が豊富にあり、短時間で何度も練習が可能です。医療用語の練習ができる課題もあるため、実践的な練習に役立ちます。
2.医療専門用語の練習:電子カルテ代行入力問題集
基礎的なタイピング練習に加え、実際のカルテ入力を想定した練習も必要です。症例に基づく練習であれば、電子カルテ代行入力問題集がおすすめです。文部科学省の「東日本大震災からの復興を担う専門人材育成支援事業」で作成されたもので、患者とのやりとりがある20症例が掲載されています。
職場で使っている電子カルテに入力する練習をすることで、さまざまな症例を想定した練習ができます。
参考:電子カルテ代行入力問題集│宮城県の医師・看護師不足を補うための医師事務作業補助者育成
電子カルテの代行入力は可能?負担を減らす「医療クラーク」とは
電子カルテの入力が苦手で時間がかかる場合、他のスタッフやツールに代行してもらう方法も一つの解決策です。カルテの代行入力は法律で認められており、代行入力をする医療クラークを採用しているクリニックも少なくありません。
医療クラーク(メディカルクラーク)とは、医師の指示のもと診療業務の事務作業をサポートする職種です。電子カルテの代行入力だけでなく、診断書や紹介状の作成補助、予診など幅広い業務を担当します。
医療クラーク活用のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
関連記事:【違法ではない】電子カルテの代行入力で業務の負担を減らすには?
メリット:医師の負担軽減効果が大きい
厚生労働省の調査では、医師の業務負担軽減策として42.6%の医療機関が「医療クラークの外来配置」が効果的と回答しています。「医師の増員」(32.9%)を上回っており、医師の負担軽減に役立つ方法として注目されています。
さらに、医師の入力内容を医療クラークがダブルチェックするという運用方法も可能です。入力ミスや記載漏れの防止につながるでしょう。
参考:令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和2年度調査)の 報告案について│厚生労働省
デメリット:負担軽減のためには十分な教育が必要
医療クラークは、入力する専門用語や略語など、覚えることが多岐にわたります。そのため、育成に時間がかかり、十分な教育を行わないと医師の業務負担軽減につながりにくいでしょう。
医療クラークを採用する医療機関を対象とした調査では、以下のように教育体制の有無によって負担軽減効果に差がみられました。
引用:2023年度 医師事務作業補助者実態調査報告 ー速報版ー│NPO法人日本医師事務作業補助者協会
院内の教育体制がない場合、統計的には医師の負担軽減効果が認められませんでした。そのため、医療クラークの運用には教育体制の整備が欠かせません。しかし、教育のためにはクリニック側の人的な余裕が必要でしょう。
「話すだけでカルテが完成」AI音声入力システムでカルテ入力を効率化
近年では、AIを活用した音声入力システムが注目されています。診察中の医師と患者の会話を自動的に録音し、高精度に文字起こしを行うツールです。専門的な医療用語や略語も正しく認識し、文字起こしした内容をSOAP形式に整理する機能も備えています。
AI音声入力により電子カルテの入力が効率化されることで、以下のようなメリットがあります。
- 患者の「目を見て話す」診察で満足度向上
- 確実な録音でトラブルやクレーム対応も安心
- スマホやタブレット使用で訪問診療を効率化
患者の「目を見て話す」診察で満足度向上
電子カルテの入力に集中するあまり、患者から「話しにくい」「話を聞いてくれない」と不満を抱かれることがあるでしょう。音声入力だと、医師がカルテを入力する必要がなくなり、患者と目を合わせてやりとりができます。
「しっかり聞いてもらえる」という患者の安心感や満足度の向上につながるでしょう。
関連記事:【2025最新】電子カルテAI音声入力で実現!信頼関係を育む診察とは?
確実な録音でトラブルやクレーム対応も安心
診察内容が確実に録音され、クラウド上に保存されるため、診察後にやりとりを確認できます。診察後に、「希望した薬が出ていない」などの申し出があった場合、受付スタッフが医師に確認しなくても録音から確認可能です。
患者との誤解があり、トラブルやクレームが生じた場合でも、録音した内容から事実確認ができるため、対応しやすくなるでしょう。
関連記事:【医療機関向け】クレーム対応のポイント|患者別対策とAI音声入力の活用
スマホやタブレット使用で訪問診療を効率化
スマートフォンやタブレットを通して使用できるため、訪問診療でのカルテ作成にも有効です。訪問先や移動中のカルテ記載ができ、「帰院してからまとめて記入する」という手間が省けます。
関連記事:訪問診療 × 電子カルテの効率化—AI 音声入力導入のメリットとは?
カルテ入力の効率化に限界がある場合はAI音声入力システムを
医療従事者の業務負担を減らすには、電子カルテ入力の効率化が求められます。テンプレート機能や辞書登録、タイピング練習などにより、入力スピード向上に努めましょう。
個人のスピード向上だけでは限界がある場合は、医療クラークやAI音声入力システムなど、入力を代行してもらう方法も一つです。
ヒーローイノベーションでは、病院やクリニックで活用いただける電子カルテAI音声入力システム「MEDISMA AIクラーク」をご提供しています。無料のオンライン相談も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。
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