Web問診のデメリットはある?対策と失敗を防ぐシステム選びとは
- 2025年7月7日
- Web問診
Web問診の導入を検討しているものの、「導入後に活用できなかったらどうしよう」「かえって業務が複雑になるのではないか」といった心配から、導入に踏み切れないクリニックは少なくありません。
紙の問診票から切り替えると患者の混乱が生じたり、導入後にスタッフの負担が増えたりする場合があります。ただ、デメリットを意識した対策やシステム選びにより、Web問診システムをうまく活用することも可能です。
本記事では、Web問診システム導入における5つのデメリットと、デメリットを回避するための対策とシステム選びのポイントも紹介します。導入後の後悔や失敗を防ぎたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
Web問診はデメリットがあるから導入が進んでいない?
Web問診は、患者がオンラインで事前に問診票に回答できるシステムです。診察前の待ち時間を減らし、診療の効率化に役立ちますが、導入に当たってデメリットもあります。
実際に、Web問診の導入は浸透していない現状があります。日経メディカルOnlineが開業医を対象に行った調査では、Web問診を「すでに導入している」のは2.8%でした。「今のところ導入する予定はない」と回答した医師も67.1%であり、導入が進んでいるとはいいがたい状況です。
導入に消極的な理由としては、「高齢患者が多く使いこなせない」「直接対面して診察、問診することで得られる情報がある」などの意見が挙がりました。
一方で、ミーカンパニー株式会社が行った調査では、2022年と2023年を比較すると、東京都ではWeb問診の導入率が約19%増加したという結果もあります。都心部では導入が進んでおり、Web問診の導入は差別化の一つとなる可能性があります。
デメリットを理解しつつ、導入後の懸念を解消できるような対策やシステム選びが大切といえるでしょう。
参考:第13回【開業医286人に聞いた】コロナ禍で注目のICTツール意識調査(後編)│日経メディカル開業サポート
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000090.000011087.html
Web問診を導入する際のデメリットと対策
Web問診の導入後に直面しがちな5つのデメリットと具体的な対策は以下のとおりです。
デメリット |
対策 |
システム選びのポイント |
ITに不慣れな患者 への対応が生じる |
・患者が使い慣れたLINEなどを活用 ・スタッフのサポート体制を整備 |
|
プライバシーの懸念 から利用が進まない |
・患者にプライバシーポリシーを明示 |
|
問診項目のバランス が難しい |
・「必須情報」を定義し、質問を厳選 ・診療の質問と役割分担 |
|
スタッフの業務負担 が一時的に増える |
・事前の研修とマニュアル整備 ・段階的に導入を進める |
|
費用対効果が わかりにくい |
・導入前に測定可能な目標を設定 ・導入後にデータをもとに効果測定 |
それぞれのデメリットと対策について、詳しく解説します。
1.ITに不慣れな患者への対応が生じる
高齢者やデジタル機器の操作に慣れていない患者にとって、Web問診はかえって利用しづらくなる可能性があります。
例えば、「スマートフォンの操作がわからない」「見にくい」などの使いにくさから、問診の未入力や誤った回答につながるでしょう。さらに、「入力方法を教えてほしい」など患者からの質問が相次ぎ、スタッフがサポートに追われてしまう可能性もあります。
対策としては、次のように使い慣れたツールと連携したり、直感的な操作性を重視したりすることが不可欠です。
- クリニックの公式LINEを開設し、トーク画面からWeb問診に遷移できるようにする
- 文字が大きくやボタンがわかりやすいシステムを選ぶ
2.プライバシーの懸念から利用が進まない
Web問診は、病歴や症状といった個人情報をデジタル上で扱います。そのため、患者が情報漏洩などのセキュリティに不安を感じ、利用をためらうおそれがあります。婦人科や精神科など、特にプライバシーの配慮が必要な診療科では、顕著にあらわれやすいでしょう。
その結果、Web問診の利用率が上がらず、紙の問診票と併用する必要が生じて業務が煩雑化する可能性があります。
対策としては、データの取り扱いについてプライバシーポリシーを明示し、患者に丁寧に説明しましょう。それでも不安を感じる患者のために、紙の問診票も案内することがおすすめです。
3.Web問診項目のバランスが難しい
Web問診は設定できる項目のカスタマイズ性が高い反面、診断精度を高めようと質問を盛り込みすぎることがあります。患者が回答途中で疲れてしまい、入力内容の正確性低下につながりかねません。
対策としては、「来院前に最低限把握すべき必須情報」は何かを定義し、質問項目を絞り込むことが大切です。直接確認した方が効率がよい項目は診察時に尋ねるようにするなど、事前問診との使いわけを意識しましょう。
Web問診票の作り方や診療科別の項目例については、以下の記事も参考にしてみてください。
▼関連記事:
【診療科別の項目例も】Web問診票の作り方は?作成ポイントを解説
4.導入後にスタッフの業務負担が一時的に増える
Web問診を導入しても、全ての患者がすぐに利用できるわけではありません。スタッフがシステムの操作説明やトラブル対応に追われるなど、一時的に業務負担が増える可能性があります。
導入直後の混乱を防ぐためには、事前の研修やマニュアル整備が大切です。システムの操作方法だけでなく、患者への案内方法やトラブル対応まで網羅したマニュアルを整備しましょう。
また、新規患者のみをWeb問診の対象にするなど、段階的に導入を進めることも混乱を防ぐために重要です。
5.費用対効果がわかりにくい
Web問診システムの導入には、初期費用や月額利用料などのコストが発生します。しかし、導入や運用自体に診療報酬が発生するわけではないため、効果がわかりにくいでしょう。導入後にデメリットばかりが目立つと、このまま運用を続けてもいいのか迷いがちです。
導入前に「患者の平均待ち時間を15%削減する」のように、具体的で測定可能な目標を設定するとよいでしょう。導入前後でデータを比較し、効果を評価しやすくなります。
デメリットを回避するシステム選びの5つのポイント
5つのデメリットを解消するためには、自院に合ったシステムを選ぶことが大切です。Web問診システムを選ぶ5つのポイントを解説します。
1.患者層にマッチした使いやすさか
患者とスタッフ、双方にとっての使いやすさを重視しましょう。特に高齢者やIT機器に不慣れな患者でも、補助なしで直感的に操作できる画面デザインのシステムがおすすめです。
例えば、対話形式で入力できるチャット形式のUIは、患者の心理的な抵抗感を和らげられます。患者が使い慣れているLINEの公式アカウントから問診へアクセスする方法も有効です。LINE連携サポートもできるベンダーを選ぶとよいでしょう。
2.万全なセキュリティ対策がされているか
患者の機微な個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策は万全である必要があります。厚生労働省などが定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠しているか、ベンダーに確認しましょう。
あわせて、通信の暗号化やデータのバックアップ体制など、具体的な技術的対策も確認します。何らかのトラブルがあっても、問診データがすぐにみられる状態にあるかが重要なポイントです。
3.Web問診票のテンプレートが豊富か
問診票をゼロから作成するのは大きな負担となります。また、質問設計が不十分だと患者の回答疲れにを引き起こしかねません。
多くのシステムには、内科や小児科など診療科別のテンプレートが用意されています。テンプレートをもとに、自院に合わせてカスタマイズすることで、効率的に問診票の作成ができます。自院の診療科に近いテンプレートが豊富に用意されているかを確認しましょう。
4.既存システムとシームレスに連携できるか
Web問診と電子カルテの連携が不十分だと、結局スタッフが手入力する二度手間が発生し、導入効果が半減してしまいます。
「連携可能」という言葉だけでなく、具体的な連携方法の確認が欠かせません。例えば、APIを介した自動連携なのか、QRコード読み取りやコピー&ペーストによる簡易的なものなのかを確認しましょう。
5.導入後の料金体系がイメージしやすいか
月額費用が安く見えても、必須の機能がオプション費用で必要となる場合があります。導入後の料金体系がイメージしやすく、費用対効果がわかりやすいシステムを選びましょう。
単にシステムを販売するだけでなく、導入後の効果検証や運用改善までを伴走してくれるベンダーを選ぶことも不可欠です。
デメリットを防ぐ対策とシステム選びで得られるWeb問診のメリット3つ
多くのデメリットや注意点を解説してきましたが、それらを上回るメリットがWeb問診にはあります。具体的には以下の3つの点が挙げられます。
メリット |
具体例 |
患者満足度の向上 |
来院前の入力で院内での待ち時間が短縮される。 自宅などで落ち着いて入力可能で利便性が向上する。 デリケートな内容も非対面で回答しやすい。 |
業務効率化 |
紙の問診票の配布・回収・スキャン・転記が不要になる。 手書き文字の判読ミスや転記ミスがなくなる。 紙や印刷、保管スペースといったコストを削減できる。 |
医療の質向上 |
診察前に患者情報を詳細に把握し、準備ができる。 問診内容の聞き漏らしがなくなり、診療が標準化される。 待合室の混雑緩和や非接触対応で感染対策が強化できる。 |
デメリットを防ぐ対策とシステム選びを工夫することで、メリットをうまくいかした運用が可能になります。
Web問診の導入をスムーズに│メルプWEB問診で診療を効率化
Web問診システムの導入には、ITに不慣れな患者への対応やスタッフの業務負担増、費用対効果のわかりにくさなどのデメリットがあります。しかし、導入前の対策とシステム選びで解消し、メリットを生かした運用が可能です。
株式会社ヒーローイノベーションが提供する「メルプWEB問診」は、患者が使いやすいチャット形式のUIを採用しています。診療科ごとの豊富なテンプレートも用意しており、クリニックの円滑な導入と運用をサポートします。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
著者PROFILE

- 医療機器メーカー営業としてキャリアをスタートした後、医療ITベンチャーにて生活習慣病向けPHRサービスのプロダクトマーケティング責任者をはじめ、メルプWEB問診の事業責任者を経験。その後、クリニック専用の自動精算機・自動釣銭機の商品の企画・開発を手がけ、現在は「医療を便利にわかりやすく」をミッションにスマートクリニックの社会実装に向け同事業の企画・推進を担当。
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