クリニックに防犯カメラの設置は必要?受付トラブルを防ぐ機能や費用を解説

クリニックに防犯カメラの設置は必要?受付トラブルを防ぐ機能や費用を解説

  • 2025年7月23日
  • AI

クリニックに設置された防犯カメラのズーム

「受付での金銭トラブル対応に時間がとられる」「患者からのクレーム対応が続きスタッフが疲弊している…」

そんな日常業務の負担に加えて、夜間や休診日を狙った空き巣や薬品の盗難といった犯罪リスクにも、しっかり備える必要があります。

セキュリティ対策のためには防犯カメラの設置が有効です。とはいえ、「そこまでする必要があるのか」と導入に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、防犯カメラがクリニックに必要な理由をはじめ、どんな機能があるのか、どのように選べばよいのか、そして費用の目安についてもわかりやすくご紹介します。

クリニックに防犯カメラが必要な3つの理由

防犯カメラがついたクリニックの内観

クリニックでの防犯カメラの設置は、院内のセキュリティ対策としてだけでなくクレーム対応にも有効です。具体的には、以下の3つが挙げられます。

1. 外部からの侵入や盗難を抑止・記録できる

休診日や夜間を狙った現金や高価な医薬品の窃盗は、クリニックの経営に深刻なダメージを与えます。

防犯カメラは犯罪の抑止効果が期待でき、万が一の際には犯人特定のための動かぬ証拠として活用できます。

2. スタッフによる内部不正を防げる

スタッフによる受付の現金や備品、薬品の持ち出しの防止につながります。特定のスタッフしか立ち入らない受付や事務室、薬品庫などに防犯カメラを設置することで、内部不正の抑止力になります。

3. 受付でのトラブルの証拠になる

「会計金額が違う」「予約したのに」などの受付での金銭・予約に関するトラブルに防犯カメラの映像を証拠として活用できます。客観的な事実にもとづいて公正な対応ができるため、スタッフを守ると同時に患者に対してクリニックの誠実な姿勢を示すことにつながります。

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クリニックに設置する防犯カメラの種類

防犯カメラの3種類

防犯カメラの種類は形状によって3つの種類にわけられます。特徴を理解して、設置場所に合ったものを選びましょう。

パレット型

存在感があり犯罪抑止効果が高いのが特徴です。主に屋外や出入口など、侵入者に「監視している」ことを明確に示したい場所に設置されます。

一方で、撮影している方向がわかりやすいというデメリットもあります。

ドーム型

天井に設置する半球状のカメラで、威圧感が少ないため景観を損ないません。待合室や受付、廊下など、患者の目に触れやすい屋内の設置に適しています。

ただし、レンズの向きがわかりにくいため、パレット型に比べると犯罪の抑止効果は劣ります。

PTZ(パン・チルト・ズーム)型

遠隔操作でカメラの向きやズームを自由に調整できる高機能なカメラです。駐車場全体を1台でカバーしたり、不審な動きを追跡したりする場面に適しています。

しかし、撮影方向が変わるため、元の場所の録画ができず死角ができる可能性があります。

犯罪とトラブル防止に効果的な防犯カメラの設置場所

防犯カメラによる犯罪やトラブルの防止効果を高めるには、適切な場所に設置することが重要です。具体的には、以下の3つの設置場所が適しています。

1. 受付・待合室:トラブル防止と安全確保

金銭の授受や患者同士の接触がある受付や待合室では、会計時のやり取りや患者同士のトラブルを録画しておくことが効果的です。

また、待合室での転倒や気分不良がみられる患者を防犯カメラで確認できるため、患者の安全確保にもつながります。

2. 薬品庫・事務室:盗難・情報漏えいの防止

厳重な管理が必要な医薬品やカルテが保管される場所は、セキュリティ対策が不可欠です。

誰がいつ入退室し、何を取り扱ったかを正確に記録できる防犯カメラが適しているでしょう。具体的には、高解像度で、暗い場所でも鮮明に撮影できる夜間撮影機能付きのモデルが適切です。

3. 出入口・駐車場:不審者の侵入対策

正面玄関や駐車場は不審者の侵入経路となるため、全ての出入りを記録する必要があります。

防犯カメラの存在を示すパレット型を設置し、屋外では防水・防じん性能を備えた機種を選びましょう。

防犯カメラの機能を見極める3つのポイント

クリニックの防犯カメラを選ぶ際には、設置場所以外にも性能を正しく評価する必要があります。防犯カメラの機能を見極めるポイントは、以下の3つです。

1. 画質・画角:場所ごとに最適な映像性能を選択

受付での金銭授受や人物の顔を正確に識別する必要がある場所では、200万画素(フルHD)以上の高解像度モデルが推奨されます。

待合室全体を広く見渡したい場合は、解像度よりも100度以上の広角レンズを備えているかどうかも重要です。むやみに高画質を求めるのではなく、場所の目的に合った性能を選ぶことが大切です。

2. 夜間撮影:24時間監視には必須

終業後の無人となった院内や照明の少ない駐車場を監視するには、赤外線照射などによる「夜間撮影機能」が必須となります。

また、わずかな光でもカラーで撮影できるスターライト機能を搭載した防犯カメラも人物特定に有効です。

3. 防水機能:屋外設置でも安心

屋外設置の場合は、風雨やちりに耐える「防水・防じん機能」を示すIP規格の確認も重要です。IP規格とは、外部からの固形物や水の浸入に製品が耐えられる程度を示します。

雨やほこりからカメラを保護するには、IP65以上の性能が必要とされています。

クリニックの防犯カメラの費用相場

クリニックの防犯カメラを導入する際には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

防犯カメラの費用は、一括購入とレンタルの場合とで異なります。

一括購入とレンタルの費用比較

一括購入の場合は防犯カメラや録画装置、工事費などの初期費用が1台当たり50~100万円かかります。設置後も、電気代や修理費、メンテナンス費用として年間1~3万円程度が必要です。

レンタルの場合は、料金体系により異なりますが、初期費用は無料~数万円程度です。機器台はもちろん、工事料金も含まれているため、ローコストで導入できます。

設置後の継続費用は月額5,500円~です。レンタル期間中は修理や消耗品交換などの保証がされる場合もあり、故障やトラブルがあっても安心です。

補助金の活用もおすすめ

クリニックの防犯カメラ導入に、医療機関などの経営を強化する「生産性向上・職場環境整備等支援事業」の補助金が活用できる可能性があります。

申請の際は、業務効率化の視点で内容を組み立てることが採択の鍵です。例えば、「受付でのトラブル対応時間を映像確認により短縮し、スタッフを本来の業務に集中させる」など、単なる防犯目的でないことを強調します。

病床のないクリニックの場合1施設あたり18万円が補助されるため、導入コストを削減できるでしょう。申請は各都道府県単位で行うため、詳細は所在地の自治体に確認してみてください。

参考:生産性向上・職場環境整備等支援事業:事業主の方へ|東京都保健医療局

【プライバシーに注意】防犯カメラを設置する際の注意点

個人が識別できる防犯カメラの映像は個人情報に該当し、個人情報保護法の規制対象となります。防犯カメラ設置に関係する事業者の義務は、主に以下の3つです。

  • 利用目的の通知・公表: 「防犯カメラ作動中」などのステッカーを掲示し、撮影目的を知らせる必要があります。
  • 安全管理措置:録画データが漏えいしたり改ざんされたりしないよう、パスワード設定などの対策を講じる責任があります。
  • 目的外利用の禁止:防犯目的で収集した映像を本人の同意なく他の目的で使用することはできません。

3つの義務に沿った説明や対策、運用を進めることが不可欠です。利用目的を明確に示し、院内に掲示して周知するなどの対応が欠かせません。

参考:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)│個人情報保護委員会

参考:個人情報の保護に関する法律 | e-Gov 法令検索

クリニックに防犯カメラを設置するデメリット

犯罪抑止や安全確保につながる防犯カメラですが、クリニックでの設置にはデメリットもあります。

1. 患者に圧迫感を与えてしまう

防犯カメラの存在は、患者に「監視されている」という印象を与え、不安や圧迫感につながることがあります。特に威圧感の強いカメラは、クリニックが提供すべき安心感を損なう恐れがあるでしょう。

形状を威圧感の少ないドーム型にするなどの配慮は可能ですが、設置の案内自体が一部の患者には精神的な負担となるかもしれません。

2. 設置が望ましくない場所がある

プライバシー保護の観点から設置が望ましくない場所があります。具体的には、診察室や処置室、更衣室、トイレなどです。

防犯対策といえども、プライバシーを侵害することは避けなければなりません。

3. 犯罪やトラブルを直接防げるわけではない

防犯カメラはあくまで犯罪やトラブルの抑止、事後の証拠確保が主な目的です。万が一、院内で急なトラブルや犯罪行為が発生しても、カメラ自体がそれを直接制止するわけではありません。

クリニックでの犯罪やトラブルを防ぐためにどんな選択肢がある?

防犯カメラが持つデメリットや限界を踏まえ、他のセキュリティ対策を組み合わせることが重要です。具体的には、次のような方法が考えられます。

1. 警備員の配置

人の目による監視と、いざという時の直接的な介入が最大のメリットです。

しかし、常駐させる場合は人件費が高額になりクリニックの規模によっては現実的でないかもしれません。

2. 生体認証システムの導入

薬品庫や情報管理室など、特定のスタッフのみが入室を許可されるエリアのセキュリティ強化に有効です。指紋や静脈などで個人を認証するため、カードキーの紛失や盗難といったリスクを防げます。

3. AI音声クラークの活用

AIクラークは、診察中の会話を録音し自動的にカルテに要約することで、医師の記録業務を削減するシステムです。診察での誤解から生じるトラブルの把握や解決に有効です。

録音内容はクラウド上に保存されるため、医師以外のスタッフもすぐに確認できます。受付で診察に関する問合せがあったときも、録音内容にもとづいて迅速な対応が可能で、トラブルの防止につながります。

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映像記録の先にある、本質的な課題解決へ

防犯カメラはクリニックの安全を守る有効なツールです。しかし、クリニックのスタッフが頭を悩ませている患者とのトラブルに対して、映像だけの記録では根本的な解決に至らないケースも少なくありません。

患者に満足してもらえるクリニックづくりを意識し、トラブルが起こらない環境づくりも大切です。トラブルが起こる根本的な原因は、医師がカルテ入力に追われ患者と十分に対話する時間が持てないことから生じている場合があります。

カルテ作成を効率化し、結果として院内トラブルを未然に防ぐために役立つのが「MEDISMA AIクラーク」です。

MEDISMA AIクラークは、診察中の会話をSOAP形式で要約してカルテに貼り付けられます。これにより、カルテ入力が無くなり、その分、患者とのコミュニケーションの質の向上が期待でき、トラブルの未然防止につながります。防犯カメラだけでなく診療の質と生産性を高める「攻めの投資」として、MEDISMA AIクラークの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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著者PROFILE

スマートクリニック事業推進室長 原拓也
スマートクリニック事業推進室長 原拓也
医療機器メーカー営業としてキャリアをスタートした後、医療ITベンチャーにて生活習慣病向けPHRサービスのプロダクトマーケティング責任者をはじめ、メルプWEB問診の事業責任者を経験。その後、クリニック専用の自動精算機・自動釣銭機の商品の企画・開発を手がけ、現在は「医療を便利にわかりやすく」をミッションにスマートクリニックの社会実装に向け同事業の企画・推進を担当。