AIによる電子カルテ革命―医療現場の声が生んだ“入力ゼロ”への挑戦
病院やクリニックにおける電子カルテ入力は、医師をはじめとした多くの医療従事者にとって大きな負担となっています。PC操作に時間を取られることで、患者との対話の質に影響が出ることも少なくありません。
こうした課題を解決するべく生まれたのが、AI音声入力システム「MEDISMA AIクラーク」です。
診療中の会話をそのまま記録し、AIが自動で要約・構造化。SOAP形式で出力されるこのツールは、「記録作業ゼロ」への挑戦から始まりました。画面は直感的で、操作はわずか1クリック。現場に根差した開発思想が、医療の質と効率を両立させる道を拓いています。
「診療のための記録」を実現するために
病院やクリニックにおける記録業務は、医師だけでなく、看護師やリハビリ職、管理栄養士など、あらゆる職種の方が記録に追われています。特に診療の合間にPCを操作するという作業は、患者さんとのコミュニケーションの質にも影響します。
私たちは、そうした現場の悩みと正面から向き合い、「記録のための診療」ではなく、「診療のための記録」に立ち返るべきだと考えました。
そして辿り着いた問いが
「入力作業をゼロにできないか?」
この問いを出発点として、AIクラークの開発がスタートしました。
AIクラークは、診療中の音声をそのまま録音し、話された内容を自動で構造化・要約し、SOAP形式に変換するツールです。
こだわったのは、誰でも迷わず使えるシンプルな画面と、1クリックで完結できる操作性。医療現場では「ぱっと見で伝わるか」「迷わず使えるか」が、現場で“すぐに使いたい”と思ってもらえる第一歩になるからです。

安全性とセキュリティ対策へのこだわり
AIクラークは、診療中の音声をもとにカルテ要約を生成する仕組みです。そのため、開発当初からセキュリティとプライバシー保護を最優先事項として位置づけてきました。
当社では、厚生労働省・経済産業省・総務省が定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(いわゆる三省二ガイドライン)」を遵守すべき基準として認識しております。
また、患者の音声や診療内容がAIに学習されることは一切ありません。
『医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン』に基づくリスクコミュニケーションにより「医療情報」の安全性を担保しています。
- お預かりする医療情報をガイドラインに準拠して適切に安全管理します。
- 世界最高水準のセキュリティを誇るGoogle Cloud上で安全に保管し、運用します。
- 厚生労働省のガイドラインに記載の『製造業者/サービス事業者による医療情報セキュリティ開示書』に基づいた情報を開示しています。
診療現場の多様なスタイルを意識したシステム設計
医師の話し方や診療スタイルは実にさまざまです。AIクラークはその多様性を前提に設計されており、診療中の自然な会話をそのまま録音するだけで、文脈を読み取りSOAP形式へ自動変換されます。最終的には医師が「確認するだけ」で記録が完了します。
こうした柔軟性を実現するために、音声認識の精度を高める工夫も重要です。実際の使用現場で推奨されている話し方のコツには、次のようなものがあります。
音声認識の精度を高めるコツ
- 「あれ」「これ」といった指示語を使わず、主語・述語を明確に話す
- オウム返しや復唱で重要な情報を強調する
- 会話をかぶせず、ゆっくり・はっきりと話す
- 擬音語や固有名詞は、一般的な表現に言い換える
これらはAIだけでなく、患者さんにとっても分かりやすい話し方であり、診察の質向上にもつながります。
AIクラークは多少の曖昧さやブレがあっても構造的に補正できる設計です。とはいえ、より精度の高い記録を目指すには、医師とAIが“少しだけ歩み寄る”ことも大切だと考えています。
正確性と網羅性を実現するプロンプト設計
医療記録において重要なのは、「正確さ」と「網羅性」、そして「余計なことが書かれないこと」です。
AIクラークが出力するカルテ要約は、「プロンプト(指示書)」に基づいて動作しています。このプロンプトには以下が定義されています。
- どの情報を拾うか
- どう構成するか
- 何を記載しないか
このプロンプトは、現場の医師のフィードバックをもとに日々改善されています。
- 出力に対する修正ログを分析し、表現や構造を最適化
- 診療科ごとのスタイルに合わせて調整
- 結果として、「修正のいらない要約」へと日々近づけています
AIクラークの要約は、医師との対話を通じて“育てていく”記録AIです。
現場からの声と改善への取り組みAIクラークはすでに全国のクリニックや医療法人で導入が進んでおり、多くの医療従事者から声をいただいています。
現場から届いた声
- 要約の精度に驚きました。感動すら覚えるレベルです。
- 「患者さんに説明しながら話すことで、検査結果も自動で記録されるようになり、作業が“削れる”ようになった」との声も
- 今のところ9割が下書き完成、1割だけ手直ししています
- 生活習慣病の診察では、ほぼ直すところがないほど精度が高いです
- 半日60人対応でも疲れないほどカルテ入力の負担が減った
- タイピングの代わりに、AIに話しかける感覚です
- 初診30分以上のケースで多く活用され、“時間短縮”というより“負担感の軽減”が大きい
- 患者にわかりやすく話すことを意識したら、AIにも伝わりやすくなった
- 箇条書きでの出力が、スタッフ間の申し送りにも使える
- 複数医師で同時利用できるのも助かっている
一方で、以下のような建設的な要望も数多く寄せられています。
- 診療科や職種に応じた出力形式の切替
- 要約スピードのさらなる向上
- 紹介状・指導記録などの多様な文書への対応
- 録音UIやボタン操作の改善
これらの要望は専用のデータベースで一元管理され、開発・CSチームが週次レビューで優先度を定量評価。リリースごとに改善内容をユーザーに通知しています。
このように「聞く→判断する→直す→伝える」サイクルを毎週回し続けることが、現場に根付いたプロダクトを育てる鍵だと考えています。
医療の質を高めるパートナーとして
MEDISMA AIクラークは、単なる記録支援ツールではありません。
“記録の手間を減らし、医療の質を高める”ためのパートナーとして、日々の診療を支えます。
医療従事者が患者さんに向き合うことに時間を使えるようにすること。そして、記録のストレスを減らし、医療本来の価値を高めるために。MEDISMA AIクラークはこれからも進化を続けていきます。