AI音声入力システムは、医師と患者さんの会話をリアルタイムで記録し、自動でSOAP形式に要約する機能を持っています。診療中の負担軽減やカルテ作成の効率化に貢献するこのシステムは、診療科ごとに導入効果の違いが顕著に現れます。ここでは代表的な診療科における活用方法をご紹介します。
Department
診療科別活用ガイド
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診療科別活用ガイド
AI音声入力システムは、医師と患者さんの会話をリアルタイムで記録し、自動でSOAP形式に要約する機能を持っています。診療中の負担軽減やカルテ作成の効率化に貢献するこのシステムは、診療科ごとに導入効果の違いが顕著に現れます。ここでは代表的な診療科における活用方法をご紹介します。
内科は、急性症状から慢性疾患まで幅広い病態に対応する診療科です。日常診療では詳細な問診や症状の経過観察、検査結果の説明など、記録すべき情報が非常に多く、SOAP形式でのカルテ記載量が多くなる傾向があります。
特に高血圧や糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患の管理では、患者さんの状態の変化を細かく把握し、それに基づいた処方調整や生活指導を行う必要があります。AI音声入力を導入することで、患者さんへの説明をその場で記録でき、診療の流れを妨げることなく、正確な情報の保存が可能となります。
例えば、「血圧130/80で前回より安定しています」「HbA1cが6.8%から6.5%に改善しました」といった説明が、そのままSOAP形式で自動的に記録されるため、入力作業の手間が大幅に軽減されます。また、「降圧薬アムロジピンを5mgに増量」といった処方の変更理由も会話の中で記録され、診療の一貫性が保たれます。
これにより、次回診察時に参照しやすく、患者さんの経過を継続的に評価するための貴重な情報資源となります。忙しい外来の中でもカルテ記載の質と効率を両立できる点は、内科においてAI音声入力が大きな力を発揮する理由の一つです。
小児科診療では、子どもの症状に関する情報は主に保護者から得る必要があり、保護者の話を正確に記録することが診断の鍵を握ります。AI音声入力により、子どもの様子を観察しながら、保護者の話をその場で記録できるため、情報の抜けや記録ミスが減少します。
親子同席の診療では、子どもと保護者の両方の反応に注意を向けながら進める必要があり、診療の情報量が多くなりがちです。AI音声入力を活用することで、保護者の問診や説明の内容をリアルタイムに記録でき、後から確認したり共有したりする際にも便利です。
予防接種管理でも有効です。「本日は肺炎球菌ワクチン3回目を接種しました。次回は4週間後に4回目を予定しています」といった会話がそのままカルテに反映され、接種ミスや予定漏れの防止に直結します。子どもの泣き声などの環境ノイズがあるため、マイクの設置場所や集音性能も選定ポイントになります。
整形外科の診療では、骨や関節、筋肉といった運動器の状態を視診・触診しながら診断を進める必要があります。関節の可動域を測定したり、疼痛の有無を確認したりする動作が多いため、診察中にキーボード入力を行うことは煩雑になりがちです。
AI音声入力を用いることで、「右膝関節の屈曲角度は120度で伸展に制限なし」「左肩外転時に疼痛誘発あり」といった所見をその場で口述し、カルテへ即時記録することが可能となります。
整形外科では画像診断の比重も高く、X線・MRI・CTといった画像所見をもとに診断・治療方針を決定します。AI音声入力を活用すれば、「MRIにてL5/S1椎間板ヘルニアを認める」「X線所見では変形性膝関節症の進行なし」など、診察室で画像を確認しながら記録が可能です。
また、整形外科ではリハビリスタッフや理学療法士との連携も多いため、口述された内容をそのまま記録できることで、チーム医療における情報共有の精度も高まります。診療行為と記録作業を切り離すことなく一体化することで、より円滑な医療提供体制の構築が可能になります。
精神科や心療内科では、診察内容の多くが言語的なやりとりに基づいています。患者さんの語る主観的な症状や生活背景、心理的な変化などを丁寧に記録する必要があり、AI音声入力によってこれらを漏れなく保存することができます。特に、感情のこもった言葉やためらいながら話す発言など、文字入力では記録しにくい微細なニュアンスも記録され、後日の振り返りや多職種カンファレンスでの共有に活用できます。
また、AI音声入力の活用により、患者さんの表情を見ながら会話に集中できます。精神科で必要な「傾聴」のスタンスを崩すことなく、効率的な状態把握が可能です。診察時間も長時間にわたるケースが少なくないため、長い情報をそのまま記録できるAI音声入力との相性が非常に良いと言えるでしょう。
精神疾患はセンシティブな内容を含むことが多く、録音や記録に対する不安を感じる患者さんも少なくありません。そのため、AI音声入力を用いる場合には、事前に患者さんへ録音の目的や取り扱いについて丁寧に説明し、同意を得ることが重要です。システム面でも、アクセス権限の制限やデータの暗号化、保存期間の設定などを整備することで、患者さんが安心して診療に臨める環境が整います。
産婦人科では、妊婦健診や婦人科疾患のフォローアップ、不妊治療といった多岐にわたる診療が行われています。妊婦健診では超音波所見の説明が重要であり、「胎児の推定体重は1800g、羊水量は正常範囲内」といった説明をAI音声入力することで、そのままカルテに反映されます。医師はエコー画像を見ながら両手がふさがっていても、話すだけでカルテを完成できるため、作業効率が格段に向上します。また、胎児の成長記録が正確に残ることで、次回診察への引き継ぎもスムーズになります。
不妊治療では、タイミング法、排卵誘発法、体外受精など、患者さんごとに異なる治療プロセスを追って管理する必要があります。月経周期やホルモン値に基づいて検査や処置が行われるため、細かな情報を正確に記録・共有することが欠かせません。AI音声入力で「排卵誘発剤クロミフェン3日目から5日間内服予定、次回D12に卵胞チェック」といった説明を診察中にそのまま話すだけでカルテに反映されるため、看護師や医療クラークとの連携が円滑になります。
この仕組みにより、診療中の内容がそのまま記録に残るだけでなく、医師不在時の問合せ対応や検査準備の精度も向上。患者さんのプライバシーに配慮しつつも、診療の質と効率の両立を実現します。
皮膚科は視診と触診が診断の中心であり、医師が患者さんの皮膚状態を直接観察しながら「右頬部に紅斑性の丘疹あり、直径約5mm、軽度の掻痒を伴う」などと話すだけでカルテ入力が完了します。記録にかかる手間が省け、診察に集中できます。特に、アトピー性皮膚炎や湿疹、蕁麻疹など、再診時に所見を継続的に記録する必要がある疾患では、経時的な変化を漏れなく記録できるのが大きな利点です。
電子カルテに保存された過去の患部画像と現在の所見を比較しながら、「前回と比較して発疹の範囲は縮小、炎症反応も軽度に改善」といった評価を音声で記録できるため、経時的変化の把握にも役立ちます。写真や画像による視覚的記録とAI音声入力による文章記録の組み合わせにより、診療の一貫性を保ち、継続的な治療管理に大きく貢献します。
さらに、外用薬や処置の指示も音声で記録できるため、「ステロイド外用薬を1日2回塗布指示」といった指示を簡単に記録可能です。診察中に処方意図や使用方法を説明しながら記録できることで、看護師や薬剤師との情報共有もスムーズになります。
訪問診療では患者さんの自宅や施設を訪れるため、パソコンやキーボードでの記録が難しい状況も多くあります。「机がない」「電源が確保できない」「短時間で複数名の対応が必要」といった制約下で、AI音声入力によってその場で録音・記録できることは大きな利点です。
AI音声入力システムはスマートフォンやタブレットでも使用でき、録音データはクラウド上に自動保存されるため、帰院後に要約された診療記録を確認・反映するだけでカルテが完成します。さらに、インターネット環境が不安定な場所でも、オフライン録音機能を用いて一時保存し、帰院後に自動同期する機能も備えています。現場記録の精度を高めつつ、医師の事後作業負担を軽減する有効な手段といえるでしょう。
また、訪問診療では患者さんごとの生活環境や家族からの情報など、多角的な情報収集が必要になります。AI音声入力により、これらの補足情報も逃さず記録できるため、継続的で質の高い在宅医療の提供が実現します。
カルテのAI音声入力を導入する際には、診療科の特性を加味し、具体的な運用をイメージしておくことが大切です。検査結果や画像を見ながら入力したり、患者さんの訴えを詳細に聴取したりするなど、何を効率化したいかを明確にします。導入の目的を明確にしておくことで、自院のスタッフに説明しやすくなり、全体の業務フローの改善をはかりやすいでしょう。